2013-02-28

残響

ライブを控え、少し前に「特別」な弦に換えた。
もう10年以上前に買ったGibsonのフォスファーブロンズ。
未開封ではあったが、流石に心配になるくらい古い弦(笑)。

初心者であった当時の私の質問攻めにも、
呆れずに答えてくれた楽器屋さんの店員がいる。
その店が無くなる事を知り、最後に訪れた際に購入した弦なのだ。
「いつか弾き語りでライブする日のために」と選んだ少し高価だった弦。
今回のアコースティックライブを前にようやく封を開けた。

「田中さんはJ-45が似合いますね」
そんな店員さんの言葉が耳に蘇る。

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ここ最近、オーダー頂くことが増えたブナ材のフレーム。
しかし、もともと取引していた材木屋さんが倒産し、
新規で取引を始めた材木屋さんのブナのグレードが酷く、
オーダーを貰っても「色が悪いので」と断らなくてはならない事になってきた。

「どうしても」と言う作家さんには、可能な限りキレイな材を提供してきたが、
塗装でごまかす他の手段も無く、どこか心苦しい仕事もあった。

2~3日前。久しぶりに材木を持って来た古い取引先の材木屋さんに
その事を相談して、私の拘りを伝えた。

今日の午後。
「兄ちゃんの熱さに負けられん」とキレイなブナを3枚だけ持ってきてくれた。
在庫の中から良いものをセレクトして、わざわざ3枚だけ届けにきてくれた。

「いい額縁作ってや」
20年以上になる取引先。
還暦をとうに過ぎた材木屋さんが笑う。

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時折気分が毛羽立ってしまい、イライラがループしてしまう事がある。
この季節はもともと苦手なのだ。

粗い言葉や考えをメールや電話で伝えてしまう事がある。
話すうちに、書くうちにエスカレートして過激になってしまう。

そんな私に「穏やかにしてるほうが似合うよ」と言ってくれる人がいる。

イライラしそうになると、その言葉を思い出し、
感情を(少しだけだけど)コントロール出来るようになった。

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記憶にしっかりと残り、響いている言葉。

それらに励まされたり、襟元を正したり。

残響に耳を澄まし静かに。穏やかに。