2025-01-24

葡萄と郷愁


2025年最初の読書は宮本輝から。30年前の古い作品を読み終えた。

1985年。東京とハンガリーの二つの国を舞台に、人生の岐路に立つ二人の女学生の姿を描いた物語で、二人が交わる事は一度も無いという面白い設定。

恋人と別れて外交官婦人になる事を選んだ純子はイギリスで暮らす道へ。
アメリカの富豪の養女になる道を断念し、共産主義の祖国に留まる決意をするアーギ。
全く違う状況の中で、どこか重なるのが「迷い」であり「若さ」であり「幸福」である。

「幸せとは」と考える。
財は愛よりも勝るのか、可能性は現実より劣るのか。
バブル前の日本とベルリンの壁崩壊前のヨーロッパという時代背景の中で、幸福を迷う若者の姿が美しい。