2024-08-09

季節風

 

季節ごとにカテゴライズされた重松清の短編集「冬」から「春」を読了。
どの作品も少し笑ったり、めちゃめちゃ泣いたり。ハズレが一作も無い。
重松清の文章が好き過ぎるのか、出だしの1行で泣いたものもある。

読む順は間違えてしまったが、このシリーズは「冬」から始まる。
「冬」の中では、大学4年の彼女と2年の彼の「卒業」までの期限のある恋愛を描いた「コーヒーもう一杯」。
色々自分の思いでと重ねて読んだ。

「春」では「よもぎ苦いか、しょっぱいか」。
女手一つで育ててくれた故郷の母を思う主人公の後悔。母への思い。
重松清を読むと母に会いたくなる。(すぐ会える)

「夏」では「あじさい、揺れて」。
交通事故で無くなった長兄と残された姉弟と両親、そして再婚を決めた義姉とその息子。
気の強い姉と主人公のやりとりが楽しく、両親の優しさに涙が止まらなかった。

最終章の「秋」の中では、認知症で車いすの父と母が妹夫婦に引き取られる一日を描いた「キンモクセイ」。
亡くなった父を少し重ねて読んだ。

重松清の短編集は沢山あるけれど、季節ごとに絞った書下ろし連載である本シリーズは少し毛色が異なり、あとがきまで涙が出る。素敵な短編集だった。


最後に「冬」におさめられた「じゅんちゃんの北斗七星」の出だしを記す。

なつかしい友だちの話をする。じゅんちゃん、きみの話だ。

これだけで物語の展開に身構え、涙があふれるのだ。